So-net無料ブログ作成
  • ブログをはじめる
  • ログイン

加藤豊久-1 志野 正面 [志野]

加藤豊久01_01
 今回ご紹介するのは、岐阜県土岐市の陶芸家・加藤豊久(1962-)の志野茶碗です。写真では、高台脇の掻き銘を向かって左90°にして置き、この写真の向きを正面としています。

 この茶碗の共箱には「加藤豊久」と書かれているのですが、同氏は2004年に「加藤土代久」(読みは同じ)と改名していますので、この茶碗はそれ以前に製作された物である事が分かります。また、同梱の栞に記載された陶歴には平成2年(1990年)までの事項が入っていますので、この茶碗はそれ以降に製作された物となります。

 この茶碗はかなり大振りで、且つ随分とゴツゴツした作りになっています。そこに所々分厚く流れるように長石釉が施され、まるで地下水が滲み出てきている山中の岩肌のような景色です。また、緋色と白のコントラストが強く出ていて、非常に力強いイメージに仕上がっています。大自然の偶然の景色を髣髴とさせる、こういう作りが私は好きで、この茶碗は素晴らしいなと感じます。

 でも、このゴツゴツした形は、どうやって整形したのでしょう。単純に轆轤で整形すれば、このような形状にはならない筈ですし、箆で削って整形したようにも見えません。ゴツゴツの段差が主に横方向に走っているので、リボン状にした土を輪っかにして積み重ねた、或いは轆轤で整形した後にリボン状の土を外から巻き付けた、そんなような作り方をしているように見えます。実際どういう作り方なのかは分かりませんが、生産性とか均一性とかを無視した興味深い作り方です。この辺は、現代陶芸の面白さだと思います。

つづく








nice!(13)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

加藤健-1 志野 高台と掻き銘 [志野]

加藤健01_06
加藤健01_07
 加藤健の志野茶碗の高台と拡大撮影した掻き銘です。この写真では、茶碗正面は上に来ています。

 高台と高台内は、形としては整っていますが、表面は凸凹していて結構ラフです。特に畳付のラフさは不思議な程で、製作の過程でどうやれば畳付がこんなにラフになるのか良く分かりません。茶碗を整形して、その後に粘土がある程度乾くまで普通に置いていたのだと思うのですが、それなら畳付はもっと平らになるような気がします。もしかして、伏せて乾かしたとか・・・? 一方、高台脇は形も表面も随分と整っています。このラフな部分と整った部分の対比は興味深いです。

 掻き銘は「健」の変形だと思われます。加藤健の掻き銘は、このパターン以外は記憶にないので、割りと分かりやすい方ではないでしょうか。作家によっては、色んなパターンの掻き銘を使っている場合があり、私のような素人では判断が難しかったりします。ですから、パターンが決っていると、ちょっとありがたかったりします。

 という事で、加藤健の志野茶碗でした。志野の典型的な一つのスタイルとして、十分楽しめる良い茶碗です。

おわり








nice!(13)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

加藤健-1 志野 見込み [志野]

加藤健01_05
 加藤健の志野茶碗の見込みです。上の写真では正面を下にしています。上から見た造形としては、ほぼ真円に近く、歪みは少なくなっています。

 この見込みには気泡が少なく、実用的です。気泡があると、そこに抹茶の粉末が入り込み、洗うのが大変になってきますし、陶器だと場合によっては気泡から水が浸み込み、水漏れやカビの原因になります。ただ、この茶碗の場合、気泡が少ないのに加えて、模様はおろか、茶溜りもないので、見込みの景色としては単調です。唯一、出来始めた貫入が味を出してきているので、この貫入がもっと育って行けば、景色はもっと豊かになるでしょう。

 この写真では分かり難いですが、この写真の3時位置辺りの口作りが少し尖った造形にカットされていて、そこが飲み口として意識されているのが分かります。志野の茶碗は多くが厚手なので、茶を飲みやすいように飲み口が意識的に作られる事が多いように思います。一方、萩や唐津では、元々薄手の茶碗が多いので、はっきりと見た目に分かる飲み口というのは、ほとんど見ないです。こういう違いは興味深いですよね。

つづく








nice!(14)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

加藤健-1 志野 背面と両側面 [志野]

加藤健01_02
加藤健01_03
加藤健01_04
 加藤健の志野茶碗の背面(上写真)と、正面向かって左側面(中写真)、同右側面(下写真)です。フワッと積もった雪のような長石釉がイイ感じです。

 全体に分厚く塗られた釉薬ですが、一部に更に分厚く且つ流れたような所もあり、鬼板による模様のない背面でも、景色に微妙に動きがあります。また、釉薬の気泡が焼成時の縮れによって連結され溝のようになっていますが、これが星と星を線で結んで星座を表した天球図譜のようにも見え、見ていて非常に面白いです。

 こうして見ると、やはり志野の魅力は、分厚く塗られた釉薬が作り出すダイナミックな景色にあると感じます。しかもその景色は、人智を超えた自然の作用によって、焼成時に偶然できた作為のない形です。勿論、それはある程度は作者のコントロール下にありますが、気泡の一つ一つ、或いは釉薬の縮れや流れの一つ一つを設計図に則って整形したものではありません。作者の意図と、自然の力による偶然とが、境目なく混ざり合うこうした景色に、私は志野焼の魅力を感じます。

つづく








nice!(13)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

加藤健-1 志野 正面 [志野]

加藤健01_01
 今回ご紹介する茶碗は、美濃の陶芸作家・加藤健(1947-)の志野焼です。上の写真は、高台脇の掻き銘を、向かって左90°に持って来ています。正面はここで良いと思いますので、抹茶茶碗の作りとしては一般的な配置になっています。

 この茶碗では、分厚く掛かった志野釉に小さな気泡が幾つも開き、それらが焼成時の釉薬の縮れによって幾つかずつ繋がり、短い溝のようになっています。これによって、全体の景色は、まるでフワッとした雪が薄く積もったような風情に仕上がっています。このパターンの志野焼は、他の作家さんでも時々見られ、志野焼の一つの定番となっているようです。

 正面の模様は、釉薬の下に鬼板で描かれた模様が縮れの間から表に出てきた赤黒い部分、同じく鬼板の模様が釉薬の上から透けて見える部分、そして焼成時に周囲から鉄分が浸み込んでいった橙色の部分とがあり、それらが立体的に重なって面白い景色を作っています。これも、薄く積もった雪景色の中で良く見られる風景と良く似ています。

 正面向かって左中ほどには、焼成時に何かが付着していた跡があり、これも一つの景色となっています。ただ、このくっつき跡については、好き嫌いが分かれる所のようで、一般的にはこれがあると評価が下がります。下の写真は、そのくっつき跡の拡大です。
加藤健01_08

 加藤健の茶碗は、オークションサイトに限らず、デパートの茶道具コーナーとかでも良く売られていて、価格的にも比較的買いやすくなっています。そして買いやすい割りには味のある作品が多く、収集するには好都合です。ただ、オーソドックスな作風で作域も広いので、これといった特徴が薄く、この作家でなければダメなんだというポイントがありません。買いやすい価格になっているのも、そうした性格が効いているのでしょう。

つづく








nice!(14)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー